いつかあなたに還るまで


「霧島さんっ!!」


「はぁっはぁっはぁっはぁっ…!」
「霧島さん、大丈夫ですか?! 私はここにいます! 大丈夫ですから! どこにも行きませんから!!」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」

ゼィゼィとあがる呼吸に激しく打ち乱れる鼓動。
今自分が置かれている状況がすぐに把握できない。

「霧島さん、大丈夫ですよ。大丈夫です」
「……」

ふと意識の中に入ってきた柔らかな声の方へと視線を送る。

「………かあ、さん…?」

無意識に口にしていたその一言に、目の前にぼんやり見える誰かが一瞬驚いた後、ふわりと穏やかな笑顔を見せた。

あぁ、やっと…やっとその笑顔が見られた…
ずっとずっと、その笑顔が見たかったんだ…

「どこにも行かないと約束します。だからゆっくり眠ってください」

「……」

右手に温もりを感じる。
それを失いたくなくて、ずっと触れていたくて。
隼人は自分の手にギュウッと力をこめると、そのまま穏やかな眠りに落ちていくように瞳を閉じた____

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