いつかあなたに還るまで
「っ、どうして…!」
ベッドに寄り掛かるようにして眠っているのは紛れもなく志保本人。
そして右手の違和感の正体。それは他でもない、志保の両手だった。自分の右手をしっかりと包み込むように握りしめたまま、その横に顔を伏せてぐっすり眠っている。
「まさか…全て現実だったのか…?」
熱にうなされながら断片的に見た光景。
志保の姿はもちろん、思い出したくない忌々しい記憶。
…そして母の姿。
それらは全て夢が見せているのだろうとばかり思っていた。
だがこうしてここに志保がいるということは…
堪らず自分の口元をおさえた。何かおかしなことを口走ったりしなかったかと。
もしかして、聞かれた…?
夢でうなされることは珍しいことではない。
が、それを誰かに見られたことはただの一度もない。
もしも彼女が何かを見てしまったのだとしたら…
『 大丈夫です。私はどこにも行きませんから! 』
朧気ながら必死に訴えかける声が脳裏に甦る。