いつかあなたに還るまで
…いや、違う。
きっと自分は何も口走ってなどいない。
彼女は何も見てなどいない。
まるで自分に言い聞かせるように、隼人は何度も何度も自分の心を落ち着かせていく。
そうしてあらためて足元の志保に目をやる。
落ち着いた雰囲気から普段はどちらかと言えば大人びて見える志保だったが、こうして眠る姿はあどけない子どものようだ。
「帰ればよかったものを…」
暗い上に眼鏡が手元にないのではっきりと時間を確認することができないが、肌で感じる分にはおそらく深夜を過ぎているのだろう。いくらなんでもまだ出会って一ヶ月足らずで無断外泊するなどと…その実態がどんなものであれ、昌臣への心象が悪くならなければいいのだが。
それに何よりも___
「…バカだな。自分が風邪を引いたらどうするんだ」
何度も帰るように促したにも関わらず、断固としてそれを聞き入れようとはしなかった。それどころか普段大人しい彼女があれだけ強い意思表示をしたのを目の当たりにしたのは初めてのことだった。
記憶は曖昧だが、確か自分を担いで寝室まで来たような気がする。