いつかあなたに還るまで
思わずあげそうになった悲鳴を慌てて両手で押さえ込む。
その代わりに全身が悲鳴を上げていた。ドクンドクンと太鼓を打ち鳴らしているように、全ての神経で脈を打っているのがわかる。
そうなるのも無理はない。
何故なら…
「ど…して…」
カーテンの隙間から差し込む光に照らされているのは、最後に見た時と全く変わらない美しい造形をした男性の寝顔。
けれど問題はそこではない。志保を激しい混乱に陥れているのは、そんな男性に何故か自分が密着しており、しかも包み込まれるようにして抱きしめられているというこの状況こそだ。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクンッ…!
どうして? 何故? どうして? 何故?
ぐるぐるエンドレスに同じ疑問が浮かんでは消える。
昨夜リビングにいたら寝室から苦しそうな声が聞こえてきた。心配になって見に来てみればやはり彼はうなされていて。必死に声をかけたけれどそれでも苦しそうで…どうすればいいのだろうと狼狽えていたら、おもむろに彼が手を伸ばした。
何かを掴むように前に、前に。
その姿が苦しそうで、そして悲しそうで…
堪らずに、気が付けば私はその手を握りしめていた。