いつかあなたに還るまで

しばらくしたら呼吸も落ち着いてきて…それでほっとしたのはよかったものの、いつの間にか彼の手に強く握り返されていて。それを無理矢理離すのも申し訳ない気がして、だからそのまま握りしめたままで…
そうしたら今度はだんだん眠くなってきて、それで、それで…

___まさか。

そのまさかの可能性を考えてサァッと血の気が引いていく。
信じられないけれど、信じたくないけれど。
この状況から判断してそれ以外に考えられない。
相手は病人なのだ。無理矢理引き込まれたなんてことがあり得るはずがないし、そもそも彼はそんなことをするような人ではない。

…つまり、私がここに潜り込んだことに他ならないということだ。

末恐ろしい結論に辿りついて愕然とする。
自分は何てバカなことをしでかしてしまったのだ。家に押しかけるだけでは飽き足らず、こともあろうに布団の中まで押し入ってしまうだなんて。
死にたいほど恥ずかしい。申し訳ない。

けれど、そんなことばかり考えていても現実は変わらない。
まずはこの腕の中から抜け出さなければ…

彼を起こしてしまわないように。

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