いつかあなたに還るまで
だがそこで大きな壁が立ちはだかっていることに気付く。
それは他でもない、自分の背中に回されている隼人の腕だ。
見た目だけではっきり言ってしまえば、志保は完全に抱きしめられた状態で硬直している。しかも相手の胸に顔を寄せるような状態で。起こさないようにこの状況から抜け出すためには、おそらく障害は1つや2つではないだろう。
一体どうすればいいというのか。考えれば考えるほど刻一刻と時間は過ぎ、頭の中も冷静な判断ができなくなっていく。
「う…ん…」
「…っ!!!」
頭がショートしそうになった次の瞬間、目の前の隼人が寝返りをうった。
それにあわせて体を拘束していた腕がするりと抜けていき、ゴロンと大きな体が反対に転がる。必然的にこちらに背中を向けている状態だ。
「………!」
これこそまさに神が与えてくれた奇跡。
心の底からこの奇跡に感謝すると、志保は息をすることすら忘れてゆっくりと布団から抜けだし、そのまま物音一つたてずに一目散にその場から逃げ出した。
「…………」
背中を向けた隼人が目を開けていたことにも気付かないまま。