いつかあなたに還るまで


「びっくりした、びっくりした、びっっっっっくりしたっ……!」


手を当てた心臓はドッドッドッドッと人生で経験したことがないほど凄まじいスピードで暴れ回っている。あのままだったら本当に心臓が止まっていたかもしれないと思うほど、志保にとってはまさに九死に一生の出来事だった。

「私ったらなんてバカなことを…」

大失態に次ぐ大失態。
勝手に心配して勝手に押しかけて、挙げ句の果てに布団に潜り込む。

「あぁあっ! 時間を巻き戻したいっ!!」

ジタバタ悶絶したところでやってしまったことはどうにもならない。
せめて彼が熟睡していてその事実に気付いていませんように。
これまた勝手だとわかっているが、心の底からその僅かな可能性を願うばかりだ。

「…はぁ、せめて帰る前にできることをやらなきゃ…」

いつまでも落ち込んでたってしょうがない。元々自分は何のためにここに来たのか。せめて最低限度のことくらいはして帰らなければ。
キュッと口を引き結ぶと、志保はキッチンへと向かった。

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