いつかあなたに還るまで
「…! おいしい…」
おかゆを口に含んだ瞬間漏れた一言は、おそらく本心から出た言葉なのだろうということは志保にも伝わって思わず顔が緩んでしまう。それと同時に彼が今考えていることが手に取るようにわかっておかしくもある。
「料理なんて全くできないと思ってらしたでしょう?」
「 ! いえ、そんなことは…」
「ふふ、無理されなくていいんですよ。昔からそういうことには慣れてますから」
「そういうこと…?」
「はい。『お嬢様なんて我儘なだけで何もできない』」
「…!」
サラリと出てきた言葉に隼人が目を見開く。
「私みたいな人間はどうしても固定概念で見られてしまいますから。もちろんその通りで私は何もできない人間です。…それでもせめて自分にできることくらいはできる人間でいたいって、そう思ってます」
「……」
「あの、無理されなくていいですからね? 食べられるだけで」
「え? あ、あぁ…大丈夫です。あっさりしていて胃に優しいので全部いただきます」
レンゲを持ち上げならそう微笑んだ隼人は、その言葉通り一粒残さず綺麗に平らげた。