いつかあなたに還るまで
「本当においしかったです。昨日の今日でこんなに食べられるとは自分でもびっくりでした」
「少しでもお口にあったのならよかったです。あと少しだけ残ってるので、もし必要になるようでしたら温めて食べてくださいね」
「何から何までありがとうございます」
志保は嬉しそうに微笑むと、カチャカチャと食器を洗い続けていく。
と、ふとカウンター越しに隼人が立っていて、不思議そうに顔を上げた。
「…? あの…?」
「…あ、いえ…。そういえば家の方は大丈夫でしょうか? おそらく泊まることになるとは想定されていなかったでしょう? 皆さん心配されているかと…」
「あぁ、そのことなら問題ありません。夕べのうちにきちんと宮間には連絡しておきましたから。祖父もなかなか家に帰ってくることはないので私がいないことも知らないと思います」
そう。あんなに大きなお邸で暮らしていても、…いや、だからこそなのか自分の祖父と顔を合わせることすらそう多くはない。それが志保にとっての日常だった。会話をするのは宮間や他の使用人がほとんどだ。