いつかあなたに還るまで
恵まれているはずなのに、何故か自分に纏わり付く寂しいという感情を消し去ることができない。罰当たりだと自分を戒めても、ふとした瞬間にそういう負の感情が自分を襲ってきたのは一度や二度じゃない。
…だからこそこうしてほんの少しでも誰かの役に立てることに必死になってしまうのかもしれない。
「…志保さん?」
「え? あ、いえ、何でもないです。それよりもこんなに長居してしまってごめんなさい! お世話をするつもりが結局迷惑をかけっぱなしで…ほんとに申し訳ないです。でも昨日よりも元気な姿が見られて少しだけ安心しました」
「志保さんのおかげですよ。お世辞でもなんでもなく本当に感謝しています。ありがとうございます」
「……」
その言葉は作りものではないような気がした。
自分がそう思い込みたいだけなのかもしれないけれど、たとえそうだとしてもそれを素直に信じたいと思った。
「志保さん?」
「…いえ、こちらこそ…ありがとうございます」
誰かに感謝されるということがこんなにも心を温かくしてくれるだなんて。
志保は込み上げてくる言葉に出来ない感情に、俯いて唇を噛んだ。