いつかあなたに還るまで
「…わかりました。そのお気持ち有難くいただきますね。じゃあ霧島さんが完全に元気になってからでお願いします」
「はい。すぐによくなりますから任せてください」
「ふふっ、それじゃあ今度こそ本当に失礼しますね」
「はい。ありがとうございました。どうかお気を付けて」
その言葉に嬉しそうに顔を綻ばせると、志保は最後にもう一度ペコッと頭を下げて出て行った。
途端にシンと静まりかえった部屋はこんなに無機質だっただろうかと、まるで他人の部屋に来たかのような錯覚に襲われた。
…らしくない。
与えられるものをもらうことはあっても、自分から与えるようなことは決してなかったくせに。そんな人間が何故あんなことを。
「…単なる気まぐれだ」
そう言い聞かせながらも、隼人は志保を掴んだ右手からいつまでも目を逸らすことができずにいた。