いつかあなたに還るまで
「児童養護施設…ですか?」
あれから完全復活をした隼人が何かお願い事は決まりましたか? と志保に尋ねたところ、返ってきたのは自分が時折足を運んでいる施設に一緒に行って欲しいというものだった。
自分の欲を一切表に出さない志保が一体どんなことを言ってくるのかとある意味楽しみにしていたのだが…結果は隼人が全く予想だにしない形で返ってきた。
「あ…もちろん無理にとは言いません。私もこんなことをお願いするのはどうなのかなと迷ったので。あくまでも霧島さんが嫌でなければで構いませんから」
「……」
聞けば高校に入ってから月に数回のペースでボランティアとして通うようになったのだという。金持ちのお嬢様の暇つぶし、あるいは気まぐれか…と考えたが、この前会った時の志保が頭を過ぎり単純にそれだけではないような気がした。
自分とは対極にいるはずの人間だが、彼女が決して幸せそうに見えないのは何故なのだろうか。富さえあればほとんどの幸福は手に入るはずなのに。
そのことを自分は嫌と言うほど知っている。
「あ…やっぱり困りますよね、こんなお願いじゃ…」
「…いえ、構いませんよ。私に子ども達の相手が務まるか自信はありませんが…是非連れていってください」