いつかあなたに還るまで
「それで、施設へ…?」
やっとのこと口を開いたものの、隼人が出せた言葉はたった一言だけ。
「はい。血縁関係があるのに施設なんて、と思うかもしれませんけど、結果的には私にはその方が良かったみたいです。不安定だったのも日を追う事に落ち着いていったって。それでも両親がいなくなったことを思い出しては夜な夜な泣いてたみたいですけど…」
「…そんなのは当然です」
隼人にしては珍しい強い肯定に志保はフフッと微笑んだ。
「それから数年は施設で暮らして。小学校高学年を迎える頃にあらためて祖父が私を引き取ることを打診してきたんです。その頃には私も落ち着いてましたし、私にとっての家族は祖父だけなんだと思ったら…一緒にいないことの方が不自然に思えてしまって。少しだけ迷いましたけど…西園寺家に入ることに決めたんです」
「……」
「そこからは霧島さんの想像通り、何の苦労もない生活を送らせてもらってます。小さな頃はご馳走が食べられるのは一年に一回だったのに、今では毎日がご馳走で。自分はとても恵まれた人間だと思ってます」
引き取ってくれる人がいて、そこでは何不自由ない生活が送れる。
それだけでも充分幸せなはずだ。
…はずなのに。