いつかあなたに還るまで

「…私はあそこに行くことで自分が誰かに必要とされてるんだってことを実感したい。そのために私はあの子達の存在を利用している。そんな自分が酷く醜いと思うのに、それでも行くことをやめられない。…私は、偽善の塊なんです…」

消え入りそうな声は震えていた。
そのまま俯いてしまった志保の表情は、びゅうっと吹き荒れた風になびいた髪に隠されたかのように見えなくなってしまった。

…泣いているのかと思った。

「志保さ…」

咄嗟に隼人が手を伸ばしたのと、志保が顔を上げたのはほぼ同時。

だが志保は泣いてはいなかった。
正確には泣きそうな顔を必死に押し殺しながら笑っていた。

「…すみません! なんだか余計なことまでペラペラと話してしまって。最後の方は聞かなかったことにしてもらえますか? ほんとにごめんなさい。…っと、そろそろ行きましょうか」


しんみりとしてしまった空気を払うように空元気を振りまきながら歩き始めた志保の体が、一歩進んだところでくんっと後ろに引っ張られた。

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