いつかあなたに還るまで
「あははっ、ほんとにそうですね。大事なのは当事者の気持ちですね」
「そういうことです」
たとえ偽善なのだとしても、信じられないほどに心が軽くなったことに変わりはない。もちろんそんなの自分のためについてくれた嘘だとわかっているけれど。
本当に偽善だけなら、彼の目は鉛のような冷たい色をしているはずだから___
「本当に…今日は何から何までありがとうございました。子ども達だけじゃなくて、私までたくさんの幸せな時間をいただきました。本当に、感謝しかないです。お礼というのも変ですけど、今度は霧島さんがしたいことにお付き合いしますから。何か希望があれば遠慮なく言ってくださいね!」
気持ちが軽くなったことでいつもの自分ではまず言わないだろうことを口にしていた。けれどきっかけは何でもいいからもっと彼と過ごす時間が欲しい。
それが彼の望むことならばもっともっと嬉しい。
どんなことでもいいから、素の彼に触れていたい___
「……じゃあ一つだけお願いしてもいいですか?」
「はい、何でも言ってください。私にできる範囲のことなら…何でもしますから。正直、あまり大したことはできませんけど」
一体彼のお願いごととは何なのだろうか。
全く想像がつかなくてドキドキする。