いつかあなたに還るまで


「名前で呼んでもらえますか?」
「…え?」

一瞬何を言われたのかわからずに本気でキョトンとしてしまった。

「霧島さん、ではなく今度からは名前で呼んでください」
「えっ…」

全く考えもしなかった方向から投げられた球をうまくキャッチすることもできない。でもそんなの当然だ。こんなの完全に想定外の願い事なのだから。

「何でも聞いてくれるんですよね?」
「は…い…」
「では今からでお願いします」
「えぇっ??!!」

いつになく強引に事を進めようとする隼人に思わず素っ頓狂な声が出てしまったが、当の本人はニコニコとご機嫌そうだ。
その一方でその目には絶対に逃がさないという強い力が宿っているような。

「う…どうしても、ですか…?」
「はい、どうしても、です」

うぅっ…! 何がどうしてこういう展開になったのか全くわからない。
流れ的におかしくないか? なんて考えたところで状況は変わりそうにない。
多分…いや、間違いなく望みを叶えるまで解放されることはない。
状況は理解できなくともそれだけはわかった。

…自分で言った以上覚悟を決めるしかない。

< 150 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop