いつかあなたに還るまで


「………隼人、さん」


うぅっ、恥ずかしい…!

これは一種の羞恥プレイというやつなのだろうか? もしかして知らないところで彼を怒らせていて、その仕返しでもされているのだろうか?
そう言われた方がなんだか納得できる気がしてきた。

「…ちょっと声が小さかったのでもう一度お願いします」
「えぇっ?!!」

ぎょっとしながら彼を二度見してしまった。相変わらずニコニコしながらも有無を言わせないぞオーラは凄まじい。
うぅっ、ほんとにどうしてこんな展開に?!

激しく戸惑いながらも志保は必死に自分を平常心にさせると、じっと自分を見つめたままの隼人と視線を合わせて…今度こそはっきりとした声でその名を呼んだ。


「……隼人さん」


眼鏡の奥ですぅっと細められた目に、彼の耳にしっかり届いたのだとわかった。
途端に恥ずかしさが込み上げてきたけれど、その瞳から目を逸らすことができない。

その理由はわかっている。
何故なら今彼が見せているのはこれまで見たことのない表情だから。

彼がまた新たな顔を見せてくれた。
恥ずかしさよりも嬉しさの方が勝っているからこそ目が離せない。

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