いつかあなたに還るまで


パコーーーン! スパーーーン!


「………」

目の前で気持ちがいいくらいの音を鳴らしながら右に左に飛んでいくボールに釘付けになる。できることならこのままずっと見ているだけでいたいのだけど…

「はい、では志保さんもやってみてください」
「……」

どうやらその願いは叶わないらしい。

「いいですか? ここのグリップをこう持って…」
「…っ」

か、神様。これは何の試練ですか?!
こ、こんな密着状態で背後から手を握られるとか…!

自意識過剰だなんて百も承知だけど、それでもキスした直後にこういう状況になるのは…恋愛スキルが皆無の人間には高度過ぎるんじゃないんですか…!
あれこれ丁寧に教えてくれてるのはわかるけど、びっくりするほどにちっとも入って来ません…!

「志保さん? どうされましたか?」
「は、はィっ! どうもしません! 大丈夫ですっ!!」

誰がどう考えても大丈夫じゃない反応に、後ろでクスッと笑う声が聞こえた。

あぁほら、笑われてる…!
神様、やっぱりいじわるです…

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