いつかあなたに還るまで
「ふぅ…」
「疲れましたか?」
「はい…明日は絶対色んなところが筋肉痛になってると思います…」
「あはは、明日来るならまだまだ若い証拠ですよ」
そういう隼人だって充分若いのだが。
志保は笑いながら受け取ったスポーツ飲料をコクンと飲み込んだ。こんなに体を動かしたのは一体いつぶりだろう。
結局あれから隼人の指導を受けながら、なんとか玉を当てて向かいのコートに入れるくらいまではできるようになった。ラリーなんて立派なものはまだまだ成立しないが、自他共に認める運動音痴が短時間でここまでできるようになっただけで驚きだ。
間違いなく彼の教え方うまいからに他ならない。
「霧島さんって学生時代にスポーツされてたんですか?」
「名前」
「えっ? あ…は、隼人さん」
ぎこちなく言い直すと隼人が眼鏡の奥の瞳をニッコリと細める。
「きちんとやったことは一度もないですね。部活もサークルもどこにも所属してなかったので」
「え…あんなにうまいのに?」
「ふふ、褒められると嬉しいですね。でも本当です。高校の時も大学の時も時間さえあればバイトに明け暮れていたので…。まぁ体を動かすこと自体は嫌いじゃないから広く浅くできるって感じですかね」
「はぁ…」