いつかあなたに還るまで
「や、やだっ、ごめんなさい! 私ったら…あっ?!」
自分がまた泣いていることに気付いた志保が慌てて涙を拭い始めたが、不意にその手が掴まれると、そのまま強い力で引き寄せられた。ふわっと足元を撫でたハンカチがそのまま地面に落ちていく。
だがそれを取る術はない。
「っ、隼人さんっ…?!」
突然のことに無意識に身を竦めてしまったが、自分を抱きしめているのは他でもない隼人なのだと認識すると、強ばっていた体から力が抜けていく。
「…志保さん」
「……はい」
互いの顔は見えないけれど、どちらも緊張しているのが上擦った声から伝わってくる。二人だけの空間で身を寄せ合いながら、ドクンドクンと互いの鼓動を感じる。
「……きちんとした形でお付き合いしていただけませんか?」
「…えっ?」
ふ、と二人の間にわずかな距離ができる。志保の肩を掴んだまま、隼人はとても真剣な眼差しで言葉を続けた。
「私と正式にお付き合いしていただけませんか」
「隼人、さん…」