いつかあなたに還るまで
「…………何?」
聞き間違いかと思うありえない言葉に、隼人は人を殺せるのではないかと思えるほどの眼光で里香子を睨み付けた。
「…っ」
そのあまりの凄みにさすがの里香子も一瞬怯むが、ここまで来て今更引き下がれるはずもない。
「やぁだ、そんなに睨まないでよ。あなた達を見かけたのは本当にただの偶然よ? でも隼人が見たこともない顔して笑ってるんだもの。びっくりっていうか、どこか具合でも悪いのかと心配になっちゃったわ」
「……」
「『あの』隼人があんな顔してご機嫌とってるなんて、きっとよっぽどな事情があるとは思ってたけど…あの子の名前を知ってなるほどなって妙に納得したわ」
「お前…」
その意図するところにギリッと右手を握りしめる。
「あの子、西園寺財閥の孫娘なんですって? 道理で女に冷たいあなたが相手にしてると思ったわ。大方、金に物言わせて言うこと聞かされてるとかそんなところなんでしょう?」
ベラベラと続く言葉に比例するように、己の拳がぶるぶると震えていく。