いつかあなたに還るまで
「相変わらず自分が望んで叶わないことなどないと思ってやがる」
乱暴に上着を叩きつけると、その忌々しい感情を隠すことなくソファーの上へと背中から転がった。吐き出した溜め息にすら苛立ちが滲む。
相も変わらず金に物を言わせてやりたい放題。
あの女にとってここを調べることなどわけないと思ってはいたが、そこまでバカじゃないと少しは信じてやっていたのに。
「どいつもこいつも…」
金を除けば何の魅力もない連中ばかり。結局富があるという事実が奴らを傲慢にし、自分にできないことなどないと錯覚させる。
さっきの女、里香子だってそうだ。
金さえあれば誰でも入れる大学を卒業後、何をするでもなく自由気ままに遊び暮らす日々。ねだりさえすればバカな親が娘可愛さにどんな無理難題も叶えてやってしまうが故、苦労の「く」すら知らないお気楽な人生を送り続けている。
典型的な我儘お嬢様だ。