いつかあなたに還るまで
「結局今日もここに来てしまってすみませんでした」
「いや、構わないよ。最初のうちは正直戸惑いもあったけど、ありがたいことに今では子ども達も懐いてくれてるしね」
最近は2人で会うときには施設へと足を運ぶことが増えていた。
もちろん子ども達に会いたいというのが第一だし、これまで以上に回数が増えているのは嬉しいことだ。
けれどそれ以上に、あの施設で過ごす隼人はどんな彼よりも自然体に思えた。だからもっともっとその姿を見ていたくて、つい足が向いてしまうというのも否定できない事実だった。
なんだか純粋な子ども達を利用しているようでとてつもない罪悪感も感じる。
それでも、心の底から楽しそうに自分達を待っている子ども達の笑顔を見られることが嬉しいということに一点の曇りもないと、志保は全てを前向きに考えようと思っていた。
けれど…
「最近お疲れですか?」
「…え?」
前を歩いていた隼人の足がピタリと止まる。
「なんだか、元気がないように感じるので…」
言わない方がいいとわかっていながらも、どうしても言わずにいられなかった。
少し驚いた表情を見せた後、すぐに隼人は笑顔で志保の前まで戻って来る。
「心配かけてたのならごめん。ちょっとここのところ残業続きで。多分それでかな。でも今日は子ども達に会って元気もらったし、…何よりも志保に会えたからね」
「…えっ?」
ぱっと顔を上げるといつの間にかすぐ目の前まで迫っていて。
「これでフルチャージ」
ほんの少し口角を上げてそう囁くと、あっと言葉にする間もなく隼人の唇が志保のそれに重なっていた。