いつかあなたに還るまで

瑠璃のことを考えながら同時に浮かんでくるのは隼人の顔だ。
何故彼は急に変わってしまったのか。

…いや、正確には元に戻っただけなのかもしれない。
それでも、最初以上に彼が遠くへ行ってしまった気がしてならない。

名前で呼ばれるようになったし、砕けた話し方だってしてくれるようになった。
それに…キスだって。
表面的な部分で言えば、恋人同士だと言ってもさしておかしくないくらいには変化したと言えるだろう。

だけど…


彼の中に巣くう『何か』が彼を苦しめている。


それが何かなんて知る由もないけれど、きっとそうだろうことは確信していた。
誰しも心に闇を抱えているものだ。かくいう自分だってそうだった。
けれど、彼に話を聞いてもらっただけで救われた自分がいる。

これまで、自分が抱えていた闇の部分を自らの言葉で話したことがあるのは宮間ただ一人。決して、決して誰にも知られないよう、気付かれないよう心の奥底に封印していた澱み。
それを何故あの時は迷うことなく話せたのだろうか。
それは彼にも自分と同じ何かを感じたからかもしれないし、もっとシンプルなことなのかもしれない。

危険だと思う以上に、彼の傍にいたいと思った。
そんな気持ちになったのは後にも先にも彼だけ。
そんな彼が何かに苦しんでいるのなら。


自分がほんの少しでもその心を分け合う存在でいられたらと思うことは、やはり独りよがりな願望なのだろうか___

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