いつかあなたに還るまで
____
「先生っ!!」
「…えっ…志保さん? あなた、わざわざ___」
「るぅちゃんがいなくなったってどういうことですかっ?! 一体どうして…!」
息を切らしながら施設を訪れた志保に驚く職員の言葉など頭には入ってこない。
今の彼女の心を占めるのはただ一つ。
___瑠璃が施設からいなくなったという衝撃の事実だけ。
可能性は限りなく低いだろうが、万が一のことを考えて志保の邸に来ていないかという連絡があったのだ。それを聞くなり体が動いていた。
激しく狼狽える志保を前に、職員の女性も苦しそうに顔を歪める。
「実は…親御さんとの面会が終わって帰って来てから少し元気がなくて。それとなく話を聞いてみたんだけどニッコリ笑って何にもないって言うものだから…。今は必要以上に聞き出そうとはせずにゆっくり様子を見守ろうと思った矢先に…」
「…いなくなったんですか?」
施設側の不手際だと認めているのだろう。
女性は今にも泣きそうな顔でこくりと頷いた。
「1時間ほど前に業者さんが来て大きな荷物の搬入をしていたの。そちらに気を取られている隙に瑠璃ちゃんが開いていた門から走り出て…」
「この辺りにはいないんですか?!」
いくら逃げ出したとはいえ所詮は小さな子どもの足だ。
すぐに追いかければ捕まえることは不可能ではないはず。
だがその答えは暗く沈んだ職員の顔を見れば歴然だった。