いつかあなたに還るまで
「るうちゃん、今日お母さんとの面会日だったんです。ずっと気になってはいたんですけど、施設に戻ってきてから元気がなかったらしくて…。それで、ちょっとした隙をついて出て行ってしまったって…」
憶測でものは言えない。
けれど、母親との面会で何かあったのではないかと考えるのは当然のことだった。
隼人自身もそう感じたのだろう。しばらく難しい顔をして黙り込んでいたが、何かを吹っ切るように頷くと、今にも泣きそうな志保の背中をポンと叩いた。
「俺も探しに行く」
「えっ?!」
つい大きな声で驚いてしまった志保に驚いたのは隼人の方だ。
「当然だろう? いなくなったとわかってるのに放っておくことなんてできない」
「ご、ごめんなさい! そんなつもりで連絡したんじゃ…」
動転していたあまりつい連絡してしまったが、普通に考えれば無関係な彼を混乱の最中に巻き込むようなことをすべきではなかった。
「バカ言うな。後になって聞いた方が怒るぞ。こういうときは一人でも多い方がいいに決まってる。とにかく探しに行こう」
「でも…」
「今は迷ってる暇なんてない! そうだろう?」
「_____」
その通りだ。
隼人に会うその瞬間まで全く同じ事を考えたのは自分自身。
今は余計な事を考えている暇なんてない。
とにかく瑠璃を無事に見つけ出す、ただそれだけを____
「 力を貸してください。お願いします!! 」
強い眼差しで頭を下げた志保に隼人も力強く頷くと、2人並んでどしゃ降りの外へと駆け出した。