いつかあなたに還るまで
「お祖父様ったらひどいわ!あれだけお見合いだけはしたくないって言ったのにどうして…?」
怒りでわなわなと震える志保を宥めるように宮間は静かに言葉を続ける。
「わかりません。ですが先日仕事のお付き合いでとてもいい男性に巡り会えたと喜んでおりました。今までの誰とも違うとも。ですから一度志保さんに会わせてみたいと…」
「そんなの勝手だわ!あの時あれだけ話をしてもうこんなことはしないと約束してくれたのに…」
怒りに燃える瞳にはゆらゆらと光るものが揺れている。
今にも零れ落ちそうなそれは大きな粒となってかろうじて留まっている。
宮間は近付いていくとそっと志保の背中に手を添えた。
「志保様のお気持ちはわかります。ですが旦那様にも何かお考えがおありなのだと思います。どうかあの時のようなことだけはなされませんよう…」
「あなたは誰の味方なの?!」
バッと体を反転させて睨み付けるが、宮間は全く動じない。
「もちろん志保様です。ですが旦那様のお考えも完全に無視することはできません。…お相手の方が志保様にふさわしくないとわかったときには必ずお守り致します」