いつかあなたに還るまで
「あなた達がきちんと仕事していればこんなことにはなってないんです! それをこともあろうに私のせいにしようだなんて、一体どういうつもりなんですか?!」
「違うんです! そういうことではなくて…!」
「……嫌いにならないでって言ってました」
「…え?」
ポツリと呟かれた一言に母親が振り返る。
全く見覚えのない顔を見るなり、たちまち眉間に深い皺が寄った。
「…あなた誰よ」
棘のある言い方に、志保はゆっくり立ち上がると母親に向かって深々と頭を下げた。
「初めまして。西園寺志保といいます。陽だまりの里にはボランティアで週に一回ほどお世話になっています」
「ボランティア…?」
「志保さんはもう何年もうちに来てくださってる方なんです。子ども達からも慕われてて、瑠璃ちゃんもいつも本当に嬉しそうに遊んでもらっています。今日も必死に探すのを手伝ってくださって…公園で見つけてくれたのも彼女達なんです」
補足するような職員の説明にも母親は心底どうでもよさそうな顔を見せる。
「…そう。それはどうもありがと」
少しも心のこもっていないお礼はかえって寒々しかった。
「……見つけた時に朦朧とした意識の中で言ってたんです。『いい子にしてるから嫌わないで。いなくならないで』って」
その言葉に母親がハッと初めて表情を変えた。