いつかあなたに還るまで
「あの子のせいだと…? じゃあ聞くけどな、お前はあの子に産んでくれって頼まれでもしたのか?」
「な、何言って…」
ゆらり、ゆらり。
発する声から、全身から、この上ない怒りのオーラが滲んでいる。
この場にいる誰もが動くことも、言葉を発することもできないほどの怒りが。
「言ってみろよ。あの子がお前に産めと命令したのか?!」
「っ、そんなのあんたに関係ないでしょう?! 一体何なのよ!」
「やることやってガキを作ったのも、結果産んだのも全ては自分で決めたことだろうが。それを都合が悪くなったら『あの子のせい』だと?! ふざけるのもいい加減にしろっ!!!」
「____っ」
あまりの迫力にさすがの母親も口ごもって何も言い返せない。
「自分で産んでおきながらまともな育児もせずに施設に押しつけて。それで気が向いたからって面会を始めて子どもに期待するだけさせて。今度は自分の都合が悪くなったらまた突き放すのか?! あんな小さな子が母親に会うためだけにどれだけの想いを抱えてたのか、ただの一度でも考えたことがあるのかよ?! 子どもはお前の自己満足のためにある道具じゃない。都合のいい扱いしかできないんなら僅かでも期待を持たせるようなことなんて金輪際するんじゃねぇっ!!」
全てをぶちまけた隼人の肩は激しく揺れていた。
息が切れるほどの魂の訴えに、直前まで暴れていた母親からは怒気が抜けさり、しばし呆然とした後、わっと顔を覆って泣き出した。
そんな母親をその場に残して隼人が歩き出す。