いつかあなたに還るまで

「し、ほ…？」

目の前にいる女性は泣いていた。
滂沱の涙を流しながら、悲しげに自分を見つめたまま。

その姿に、隼人の中を蠢いていた怒りが一瞬にして消えていく。


「ど…して…？」

「……え…？」

聞き返したのと、再び志保が隼人の腕を掴んだのは同時だった。

「どうして隼人さんはいつもそうなんですか…？　どうして…どうして全てを自分一人で抱えようとするんですか！」

「……」

「あなたが心の中に何かを抱えているのなんて知ってます。私にはそれが何かなんてわからない。でも苦しい時辛いとき、自分の中だけじゃどうにもならなくなったとき、ただ聞いてあげることくらいはできます！　そんなに苦しそうな顔をしたあなたを一人になんてできない。絶対にしない！！　たとえ偽善だと言われてもいい。それでほんの少しでも救われることがあるのなら、それでも構わないって教えてくれたのは隼人さんじゃないですか！！」

「＿＿＿＿＿＿」



言葉を失った隼人の顔に志保の手がゆっくりと伸びてくる。

微かに震える手が頬に触れた瞬間、隼人の体がまるで怯える小さな子どものようにビクッと揺れた。