いつかあなたに還るまで
すべてに、ふれる
カタン…
後ろから聞こえてきた音に振り返ると、隼人はふっと表情を和らげた。
さっき見せていた怒りなどまるで嘘のような穏やかな顔で笑っている。
その視線の先にいるのは全身をほんのり赤らめた志保だ。彼女の身を包んでいるのは明らかに本人の物ではないとわかる、ぶかぶかのシャツとズボン。
「ちゃんとあったまった?」
「…はい。ありがとうございました」
「どういたしまして。ホットミルク作っておいたから。飲んで」
リビングに入ってきた志保にカップを手渡すと、そのままそっと背中を押してソファーへと座らせる。
「何から何までありがとうございます。…いただきます」
受け取ったカップを両手で包み込むと、ふぅっと息を吹きかけながらゆっくりと飲み込んだ。
「…あったかい…」
胸の中心からじんわりと広がっていく温もりに思わずうっとりしてしまう。
そんな感情に忠実な志保の姿に、隼人はプッと吹き出した。
「あ…すみません」
「なんで謝るのさ。可愛いなって思っただけだよ」
「はっ…?!」
いともあっさりと吐き出された甘いセリフに、飲み込んだばかりのミルクが噴き出そうになって慌てて口を押さえた。