いつかあなたに還るまで


あれから。

結局どれほどの時間抱き合っていたのかわからないまま、ようやく互いの体を離した後は言葉もなく隼人の部屋へと向かっていた。

___その間しかと手を繋ぎ合ったまま。

そうして家に着くなり芯から冷え切った体を温めるべく、隼人の言葉に甘えてお風呂に入らせてもらって今に至る。
湯船に浸かっている間、我ながら何と大胆な行動をしているのだろうと今さらながらに驚いた。無我夢中だったとはいえ、嫌がる相手の意志も無視して自分の意見を押し通したことなど、生まれて初めてのことだ。

冷静になると心底嫌われてしまったのではないかと不安が過ぎったが、今こうして目の前で穏やかな表情を見せてくれる彼を見ているだけで、自分の選択は間違っていなかったのだと思えて泣きそうになる。

あの時はどうしても、たとえ嫌われることになったとしても、彼を一人にしたくない。その一心だった。


「俺もすぐにシャワー浴びてくるから。待ってて」

「はい。あの…借りた側の私が言うのもおかしいんですけど、ゆっくり温まってきてくださいね」

「え? …ぷっ、りょーかい」

やっぱりお前が言うななことを言ってしまったと恥ずかしいが、楽しそうに笑ってくれる顔が見られただけで幸せだ。


今の彼からは何の壁も感じない。
ここ最近ずっと2人を隔てていたものはもちろん、出会った頃に感じていた距離すら、何も。


願望がそう思わせているのかもしれないけれど、本当の彼自身をさらけ出してくれているように思えてならなかった。


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