いつかあなたに還るまで
あらためて腕の中で眠る志保に目をやる。
これまで色んな女を見てきたが、彼女だけは最初から違っていた。
何がと聞かれてもうまく説明なんてできない。
それは理屈ではなく直感で感じたことだったから。
言葉にできない違和感を感じながら、それでも必死に言い聞かせていた。
他の女と何も変わらない。いつも通り自分を演じていればいい。
そうすれば全てが自分の描いたとおりの未来になると。
けれど現実は何一つ思い通りにはならず、それどころか会う度に自分の感情を乱され、暴かれた。
決して、決してこれまで人に見せてこなかった、
…いや、決して認めようとしなかった脆い自分を。
あの日パーティで会長に手を差し伸べたことから全ては始まった。
思えばあの時から導かれていたのだ。
普段ならありえない行動も、全ては彼女に出会うためだったのだと。
それをこうして素直に認められる自分に自分が一番驚く。
けれど、この変化を心地いいとすら思う。
全身に絡みついていた重い重い枷から解き放たれたような、そんな清々しい気持ちで満たされている。