いつかあなたに還るまで


そこにあるのはくっきりと浮かびあがった縦線。
それは他でもない、妊娠している可能性を示しているもの。

「…っ」

ドクドクと経験したこともないような音をたてて鼓動が刻まれる。
このままだと心臓発作で倒れてしまうのではないかと思えるほどに、激しく。


「赤ちゃんが…いるかも、しれない…?」


何度も何度も紙がすり切れてしまうほどに説明書を読んだ。
検査結果が必ずしも100%ではないということも。
それでも、陽性反応が出るということはその可能性が限りなく高いということ。


「………」


予想もしていなかった展開に驚き、戸惑ったのはほんの一瞬のこと。
いつの間にか守るようにして下腹部に両手をあてていたのは、自分で意識しての行動ではない。本能がそうさせた。


____ここに命があるのなら、それを全力で守りたい。


そう思ったら、次の瞬間には得も言われぬような喜びが全身を駆け巡っていく。
ここに、愛する人の子どもが宿っているかもしれない。
あの震えはきっとどこかでそれを願っている自分がいたから。

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