いつかあなたに還るまで
「妊娠していますね」
後日、期待と不安で息が詰まりそうなほどに体を強ばらせていた志保に、モニターを見ながら女医がきっぱりそう言い切った。
あまりにもあっさり言われたせいで、一瞬理解できなかったほど。
「最終月経から見て、もうすぐ7週目に入るところね」
「 _____ 」
しばし呆然とした後、じわりじわりと体の中から喜びが広がっていく。
ここに来るまでに全く迷いがなかったかと言えば嘘になる。
今の隼人なら何も迷わずに信じられるとはいえ、自分はまだ学生の身。きっと彼自身もまだ結婚までは考えていなかっただろう。ましてや子どもなんて。
祖父にきちんと交際の許可をもらいたいと彼は言っていた。その矢先での妊娠判明。もともと祖父の紹介から二人の関係が始まったことを考えれば、おそらく交際に関しては快諾してくれるのは予想がついた。
けれど妊娠したとなればどうだろう。
後継者問題で母と衝突した過去を思えば、祖父は昔気質の人間だといえる。結婚の前に子どもができたなんて言えば、もしかしたら激怒されてしまう可能性だって…
そこまで考えて頭を振ると、志保は両手に忍ばせていた紺色のハンカチをギュッと握りしめた。