いつかあなたに還るまで
もしそうだとしても。
その時はわかってもらえるまで真剣に説得すればいい。
決して、決して生半可な気持ちではないのだと。
…もしもの時には西園寺家を出ても構わない。
自分でも驚くほど、既に母として何があっても子どもを守りぬいてみせるという覚悟ができていた。
愛する存在が、守るべき存在ができると人はこんなにも強くなるのか。
母が全てを捨ててでも父の元へと飛び込んでいった気持ちが今初めて本当の意味で理解できた気がした。
もちろんそうならなくて済むようにとことん祖父と向き合うつもりだけれど。
「ただ…」
一人想いを馳せる志保に、女医が思案げにモニターを見つめている。
その表情に妙な胸騒ぎを覚えた。
「週数に対して少し胎嚢が小さいですね。鼓動もややゆっくりめだし…」
「え…」
モニターに映る小さな黒い丸。その中に白い影がはっきりとあって、ピコピコと点滅を繰り返している。それを見ただけでここに命があるのだと全身を走った感動が、瞬く間に不安で塗りつぶされていく。
何故なら、志保自身に心当たりがなかったわけではないから。