いつかあなたに還るまで

『何も変わったことはない?』

きっと挨拶のような感覚で何気なく口にしたのだろう。
その言葉にドキッと咄嗟にお腹に手をあてる。

本当は今伝えるべきことなのかもしれない。
…けれど、遠い地にいる彼に話したところで余計な不安を煽るだけだ。それが原因で仕事に支障を与えてしまうようなことだけは絶対にしたくない。
いずれにせよそう遠くないうちに彼は帰ってくる。

全てはその時に____

「…いえ、何も。しいて言うなら早く隼人さんに会いたいってことくらいです」

『はははっ! それは確かに。予定より少し長くなってごめんな。でも本当にあと少しだから。あと数日したらやっと帰国できる。だからもう少しだけ我慢してくれるか?』

「…はい。頑張ります。帰って来たら頑張ったご褒美くれますか?」

『 え? 』

志保らしくないおねだりに一瞬隼人も面食らった様子だが、すぐに笑い声が響くと、もちろん! と力強い答えが返ってきた。それまで泣いていた志保にも思わず笑顔が浮かぶ。

『志保、覚えてるか?』

「…え?」

『帰ったら君に伝えたいことがあるって言ってたのを』

「あ…」

そう言えば出発前にとても真剣な面持ちでそう言われたことを思い出す。

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