いつかあなたに還るまで
名残惜しそうに携帯を撫でる志保の顔に涙はもうない。
浮かんでいるのは穏やかな笑顔だけ。
あんなに不安で仕方なかったのに、声をきいただけでこんなにも力が湧いてくるなんて。
「早く会いたいです…隼人さん…」
囁くように頬を寄せると、志保は再びその体をゆっくりと横に倒した。
そうして思いっきり息を吸い込むと、まるで隼人に抱きしめられているかのような感覚に包まれていく。
「もうすぐでパパに会えるからね。元気に育ってね…」
優しくお腹を撫でながら何度も何度もそう語りかける。
すっかり緊張から解き放たれた体には面白いほどに力が入らない。
長くせずして急激な睡魔に襲われると、志保はさっきまでの不安が嘘のように安心しきった顔で眠りに落ちていた。