いつかあなたに還るまで
宮間をもってしても掛ける言葉一つ見つからない。
この世に存在するどんな言葉を使っても、今の彼女にとっては何の慰めにもならない。我が身を引き裂かれるよりもずっとずっと辛いはずなのに、涙を流すことはおろか、感情の起伏すら何もない。
それほどに、志保の中に大きな空洞ができてしまった。
彼女に寄り添える人物がいるとするならば、それはこの世界にただ一人。
けれど皮肉なことに今最も彼女が必要としている人はここにはいない。
医者にどれだけ説明されようとも、もしあの時…そんな罪の意識で押し潰されそうになっているに違いない。
こんな時こそ、あの人が必要なのに___
そして宮間は宮間で己の選択を激しく悔いていた。
志保の様子がおかしいことにはとっくに気付いていた。そしてその理由がおそらく妊娠しているからだろうということにも。
それに気付いていたのに。
何故あの時里香子と引き合わせることを許してしまったのか。
あの女がどんな目的で志保との面会を求めたのかなど最初からわかっていたというのに。志保の真っ直ぐな眼差しに圧倒されて、ついそれに従ってしまう自分がいた。
あの時、何が何でもやめさせていれば未来はまた違っていたかもしれないのに。
おそらくこうなる運命は避けられなかったとどこかでわかっていても、その後に悲劇が起こったことを考えれば、そう悔やまずにいられないのはもうどうにもならないことだった。