いつかあなたに還るまで

「……志保様?」

もしかして聞き間違えたのだろうか。
…きっとそうに違いない。
そう言い聞かせる宮間を尻目に、振り返った志保は強い眼差しでこちらを見据えていた。

___何か重大な決意を胸に秘めたような、そんな目で。


「お願い…隼人さんには絶対に言わないで…!」
「 ____ 」


聞き間違いなどではない。
今志保ははっきりと、彼にはこの事実を話してくれるなと言った。
一体何故?

話したくないほど辛い現実なのはわかる。けれど彼はお腹の子の父親だ。知る権利だって当然あるし、自分一人だけが知らなかったと後に知ることとなれば、少なからず彼も傷つくだろう。
それに、ようやく同じ未来を向き始めた二人だからこそ、今回のことも共に乗り越えて欲しい。

たとえどんなに時間がかかろうとも、二人寄り添いながら。
それが間違いなく彼らの未来に繋がると信じているから。

「志保様、会長には何も言いません。ですが霧島様は…」

「お願いよ宮間! これから先どんな我儘も言わない! どんな言うことでも聞く! 見合いをしろと言えばするし、結婚しろと言うならどんな相手とだってする。でもこのことは…このことだけは彼には言わないで…! お願いよ……どうか、どうか、お願いしますっ…!!!」

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