いつかあなたに還るまで
女に宝石を贈ったことがないわけじゃない。だがそのいずれも求められるがままに自分を演じていただけで、そこに心など欠片ほども伴っていなかった。
自分でも、恐ろしいほどに冷酷な人間だったと自覚している。
そんな人間が、生まれて初めて自らの意志で誰かのために何かをしたいと思った。こんな日が来るだなんて夢にも思わなかったが、彼女に似合うデザインを考えたり、欧州にいる間焦れるほどに帰国が待ち遠しかったり。
玉手箱のように次から次に現れる新しい自分に、驚くと共に何とも言葉にできない心地よさを感じていた。
帰国と同時に彼女にプロポーズする。
これは自分の気持ちを認めた瞬間に決意していたことだった。
そうしてようやくそれが現実のものになるのだと、己の手に握りしめられた袋を見つめる。
きっと驚くだろう。
…けれど、それからすぐに大粒の涙を流しながら彼女は笑ってくれる。
そして頷いてくれる。
そう信じている。
電話で珍しく冗談めかしてご褒美をくださいねと話していたが、彼女にとってこれがそれに値するものであってほしいと心から願う。