いつかあなたに還るまで
「見てもらえばわかると思うけど、これエコー写真よ。ほら、ちゃんと人間の形してるでしょう?」
呆然とする隼人などお構いなしに、里香子は写真を指差しながらうふふと笑う。だが隼人にはその画像すら何も見えない。
「5ヶ月に入ったところなの。私、もともと生理がかなり不規則だったから。それにつわりとかも全くないタイプみたいで。だから自分が妊娠してるなんてちょっと前まで全く気付かなかったの」
そうして視線を写真から目の前に移すと、尚も呆然と、…いや、まるでこの世の終わりのような絶望的な顔をしている男に向かってにっこりと微笑んだ。
「あなたに一方的に捨てられて心の底から恨んでたけど…でもいいわ。こうしてかけがえのない宝物が手に入ったんだもの。もちろん私と結婚して父親になってくれるでしょう?」
ぐわんぐわんと大音量で里香子の声が響き渡る。
もはや何を言っているのかもわからないほどに、頭の中が真っ白になって。
「まさかこの子を見捨てるなんて言わないわよね? ____父親に見捨てられた子どもがどんな思いで生きていくのかを誰よりも知っている、あなたが」
だがまるで勝利宣言のように告げられたその言葉だけは、隼人の記憶にこれでもかと鮮明に刻みつけられた。