いつかあなたに還るまで





「…………」

ぼんやりと焦点の合ってきた景色はよく見覚えのあるものだった。
いつの間に部屋へと戻って来ていたのだろうか。見れば玄関にスーツケースが転がり、ソファーへと腰を下ろしている自分がいる。

未だ何が起こったのかを理解することができない。

妊娠…?
子ども…?
誰が、誰の…?


『 あなたの子どもがいるの 』


考えることを放棄しようとすると、その言葉が一瞬にしてフラッシュバックする。

「こど、も……? おれ、の…」

掠れた声ではそれだけ口にするので精一杯だった。

< 281 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop