いつかあなたに還るまで
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もうどれほどの時間見つめていただろうか。
ガラス越しに横顔を一目見た瞬間体中からこみ上げてくるものに、咄嗟に手で口を押さえて自分を落ち着かせる。
ずっと見つめていたい。
できることなら、このまま時間が止まってしまえばいい。
そうすれば、ずっと永遠に____
そんな浅ましい欲望を見透かされたかのように、ずっと見つめ続けていた顔がふっとこちらを向いた。自分が見られていたことに少なからず驚いたのか、一瞬目を丸くしながらもすぐにふわりと微笑んだ彼女に、今にも踵を返して逃げ出したくなった。
だがどんな現実も決して自分を逃がしてなどくれない。
それは幼い頃から嫌と言うほど直面してきた事実。
今さらわざとらしいのは百も承知だが、さも今来たばかりだと言わんばかりに手を挙げると、ようやく目の前の扉を開けて待ち人のもとへと向かった。
「待たせてごめん」
「…いえ、まだ時間前ですよ。私が勝手に早く来すぎただけです」
そう言って微笑む志保の姿を見ただけで目頭が熱くなってきたような気がして、そんなみっともない姿を晒してなるものかと必死に自分と闘った。