いつかあなたに還るまで
ドサッと背中から体をソファーへと放り投げる。全身を襲う酷い倦怠感に、右手で目を覆ってふぅーっと大きく息を吐き出した。
志保と別れてから三週間。
隼人の時計はあの瞬間から完全に止まってしまった。
自分がいつ起きて、寝て、いつ仕事に行っているのか。食事をしているのかどうかすらも、何もわからない。
ただ長年染みついた習性だけが自分を動かし、生かしている。
そんな状況だった。
志保より子どもを取ったのは自分だ。
だが、里香子と過ごす時間は自分で想像していたよりも遥かに苦痛だった。以前は復讐という目的があればこそ彼女といることに耐えられた。それがなくなってしまった今、ましてやこの先一生彼女の傍で生きていかなければならないという見えない鎖は、日を追う事に隼人の心身を追い詰めていた。
毎日自問自答する自分がいる。本当にこの選択が正しいのかと。
愛情の欠片すら抱けない相手と共にいることに何の意味があるのか。
何度も何度も立ち止まっては、まだ見ぬ我が子の顔がちらついてその考えを押し留める。
幼少期から父親にかけられた呪いは、自分で思っている以上に自分の中に巣くっているのだと思い知らされる。
いっそのこと自分一人で子どもを育てられたらどれだけいいかと願わずにはいられないほどに。
「志保…」
気がつけばその名を口ずさんでいる。
言った本人がそのことに気付いているのかすらわからないほど、無意識に。