いつかあなたに還るまで

強い目力で真っ直ぐ志保を見据えると、宮間ははっきりと言い切った。
昔から誰よりも頼りにしてきた姉とも母とも言える存在。その彼女からそう言われてしまっては、志保はそれ以上の言葉を続けることはできなかった。

全身から漲っていた怒りの炎がみるみるうちに萎れていく。
はぁっと俯いて零した溜息と共に一粒の滴がパタリと絨毯に落ちた。
それは瞬く間に染みこんでいく。

「…わかったわ。一度会えばいいんでしょう?」

「志保様」

「わかってる。もうあの時みたいに家出したりなんかしないから。…しばらく一人にしてちょうだい」

そう言って窓際まで移動すると、志保はそのまま視線を外へと投げた。
宮間はしばらくその後ろ姿を見つめていたが、やがて一礼すると静かに部屋を出て行った。


パタンと扉が閉まる音を背中で聞くと、志保は再び溜息を零した。


「どうして今になってまたお見合いだなんて…」

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