いつかあなたに還るまで
両手で顔を覆ったところでブブブ…と胸元が震えた。
直後ガバリと体を起こしてスマホを取り出す。みれば画面に表示されているのは非通知の文字。
「_____もしもしっ?!」
いつもなら絶対に見向きもしないはずのそれを、隼人は何かに取り憑かれたかのように耳に押し当てた。
「もしもし、もしもしっ?!」
そんなことあるはずがないとわかっているのに。
未だ捨てきれない未練が無様な姿を晒す。
もしかしたら、もしかしたら彼女の声が聞けるのではないかだなんて。
「もしもし? 志____」
『……もしもし、あのっ…!』
だが聞こえてきた全く見知らぬ声に、即座に馬鹿げた願望は打ち砕かれた。
…そう。そんなことがあるはずがないのに。
彼女の決意がどれだけのものであるか、まざまざと見せつけられたじゃないか。
「は…ははっ…」
自分が滑稽過ぎて乾いた笑いが止まらない。
そう言えば笑うのはいつ以来だろうか。
表情筋を動かすことですら、もう久しくしていない気がする。
だらりと全身から力が抜けていく。
『あのっ、霧島隼人さんですよね? どうしてもあなたにお話ししたいことがあるんです! ___里香子のことでっ…!』
だがあと僅かでスマホが落ちそうになったその刹那聞こえてきた名前に、条件反射のようにピクリと隼人の体が止まった。