いつかあなたに還るまで
楽しい時間の後に訪れた別れの時間。
瑠璃を筆頭にやはり子ども達には大泣きされてしまったが、最後は笑顔で「またね」を言うことができた。志保にとっても寂しくないと言えば嘘になるが、次に会うときにはあの子達もびっくりするほど成長しているのだと思うと、寂しさよりも楽しみの方が勝っているような気がした。
その帰り道、志保はある場所へと向かっていた。
「わぁっ……きれー…」
ぱっと開けた景色に感嘆の息が零れる。
そう言ったきり、言葉もないまま目の前の光景に目を奪われた。
水平線は夕焼けの朱でゆらゆらと煌めき、すぐ眼下に咲き乱れるコスモスの花はまるで水面に浮かんでいるようだ。
「……」
雄大な景色を見つめているうちに、気がつけば志保の頬を涙が伝っていた。ツーッと顎をなぞってやがてパタリと地面へと吸い込まれていく。
けれどそれを拭うこともせず、流れゆくままに次から次へと零れ落ちていく。
「綺麗だね…」
語りかけるように呟いた志保の両手は、包み込むようにして下腹部に触れていた。
そしてその手には紺色のハンカチが握られている。
あの日、隼人に連れて来てもらったこの場所。
最後にどうしてもここに来たかった。
……この景色を見せたかった。
あなたのパパとママが一緒に見た思い出の場所なんだよって。