いつかあなたに還るまで
「…パパ、ママ、きっとそっちで大事にしてくれてるよね…?」
もう随分と遠い記憶になってしまった父と母だけれど、いつ思い浮かべても、昔と少しも変わらない優しい眼差しで微笑みかけてくれる。
早くそっちに行ってしまったことは悲しいけれど、そんな子煩悩な両親がいれば寂しい思いなんてしていない。それどころか自分と早くに別れてしまった反動で、嫌がられるくらいに孫を猫可愛がりしている。そんな気がした。
「…ううん、絶対そうだね」
『 志保、いつでもあなたを見守ってるわよ 』
『 この子のことはお父さん達に任せなさい 』
ふわっと海から舞い上がってきた風に乗ってそんな声が聞こえる。
「…私、精一杯生きるよ。パパとママと、…あの子の分まで。悔いのない人生を送るから。…だからいつかそっちに行くまで、ずっと見守っていてね」
さわさわと、頬を撫でる風はもちろんだよと言ってくれているようだった。
くいっと涙を拭って大きく息を吸い込む。
「…行ってきます!」
大海原に向かってお腹の底から声を出すと、直後笑顔を浮かべた志保はくるりと海に背を向けた。