いつかあなたに還るまで
慟哭
今度こそ。そう思って伸ばした指がすんでのところで止まる。
あと数ミリ動かせば音を響かせるインターホンを、結局は押せないままに手は下りてしまった。
「………」
それからしばらくの間そこに立ち尽くしていたが、自分に問いかけるように小さく首を振ると、隼人は今来た道を戻り始める。
もう幾度同じ事を繰り返しただろうか。
それでもどうしても、あのボタンを押すだけの勇気が持てなかった。
…今さらどんな顔をして会えばいいというのか。
どんな言葉を並べても、自分の犯した罪の重さが消えることはない。
直接会って謝罪したいというのはこちら側の勝手な願望であって、決して彼女がそれを望んでいるわけではない。それどころか既に前を向いている彼女からすれば、いつまでも未練たらしくのこのこ会いに来られたところで、迷惑以外の何ものでもないだろう。
…そう。誠心誠意謝罪したいと言いながら、結局はただ彼女に会いたい。
心のどこかでそう思っている自分がいる。
それがわかるからこそ、ここを訪れては寸前で思いとどまって引き返すを繰り返しているのだ。
そんな日々を送るようになって、もう二ヶ月以上が過ぎていた。